こんにちは。
「書いている人」@CPABlogです(プロフィールはこちら)。
突然ですが皆さんはどのような「ライフプラン」をお持ちですか?
- 仕事で何か大きなことを成し遂げたい
- 子どもと奥さんとともに毎日笑って暮らしていきたい
- 世の中の役に立つ人間になりたい
- 大金持ちになって自由な人生を謳歌したい
一度しかない人生なので、考えない人はいないと思います。
私は「死ぬときに「生きてきて良かった」と思えるような人生を歩みたい」と思っています。
そんな「ライフプラン」ですが、100人いれば100通りあるはず。
中には「仕事が大好きで、仕事以外のことに時間を使いたくない」という人もいるかもしれません。
でも多くの人が自らの「ライフプラン」を考えるとき、ぶち当たるのが「仕事」の壁ではないでしょうか。
平日の起きている時間のほとんどを仕事に費やすことになりますので、ぶち当たって当たり前だと思います。
「自らのライフプランを実現すること」と「食っていくための仕事」をいかに両立させるか。
ここ十年、ちまたでは「ワークライフバランス」という言葉で語られています。
今日はこの「ワークライフバランス」について掘り下げてみたいと思います。
監査法人において「ワークライフバランス」を実現させることはできるのでしょうか。
監査法人でのワークライフマネジメント支援への取り組み
各監査法人では積極的に職員のワークライフマネジメントを支援しています。
ある法人ではサイト上で以下のように取り組み事例が紹介されています。
より良い労働環境の提供はもちろん、プライベートを含めた生活の充実と構成員一人一人の幸福を、構成員とともに考えていきます。○○各社はそれぞれの業態に合わせて、フレキシブルワークのための環境を整備しています。以下はその例です。
- 有給休暇(時間単位で取得可能)
- 配偶者出産休暇
- 監査繁忙期の祝日出勤日のイベント託児
- 在宅勤務
- フレックスタイム制度/選択型シフト勤務制度/中抜け勤務制度
- 朝勤務の奨励のインセンティブ支給
- 留学、研修などの自己啓発、ボランティア活動を目的とした休職
また別の法人では以下のような制度を設けています。
多様な働き方を実現するため、仕事と家庭の両立支援として、法定制度を上回る育児・介護に関する制度を整備しています。また、社内での意識改革・風土醸成のために、イベントなども実施しています。
- FWP(フレキシブルワーキングプログラム)
- 有給休暇の時間単位付与
- 特別休暇の付与
- 不妊治療休職制度
- デロイト トーマツ企業内保育園の開設
- 育児コンシェルジュサービス
- 各種補助(ベビーシッター/病児保育シッター利用料金補助等)
- 産休・育休者向けのネットワーキング
- 育児・介護リーフレットの配布
採用している制度そのものは似たり寄ったりで、出産や育児、介護などライフイベントを乗り切るための制度が多いことがうかがえます。
いずれの法人も職員たちの「ワークライフマネジメント」を積極的に支援していることをアピールしています。
では中で働く会計士たちはこれらの制度のことをどう思っているのでしょうか。
中で働く会計士たちの思い
以下は転職サイトで見つけたある監査法人の口コミの抜粋です。
書かれた方は、シニアスタッフの女性です(アンダーラインは引用時に追加)。
育児や介護を対象とした制度がある。育児制度では、⼦どもが⼩学校6年⽣まで利⽤可能となっており、他社と⽐較しても好条件といえる。この制度は、時短勤務・時差勤務・週3,4⽇勤務等から選択可能。マネジメント層とスタッフ層で条件が異なり、マネジメント層は業務割合を決めて勤務することが可能。また在宅勤務はシニアスタッフ以上が可能。
地域によって制度利⽤率は⼤きく異なり、特に東京・⼤阪エリアの制度利⽤率は低い。
時短勤務だからと⾔って残業できないわけではなく、アサインされるPJや、理解のない上位者の下では必ずしも配慮してもらえない。
⼈事評価については、裁量労働制導⼊後も稼働率・貢献度が⾼い者が評価をされる仕組みである。制度利⽤者がどれだけ効率的に業務を遂⾏しても評価をされることはない。制度利⽤者が昇進・昇格するケースは殆ど例がない。
この意見は監査法人の現状をきちんと見抜いた的確な意見だと思います。
また同時に皆さんの感覚とも近い意見なのではないでしょうか。
各法人ともリクルートを有利に進めるために、表面上は職員たちの「ワークライフバランス」を応援するのかのようにアピールし、新しい制度をどんどん導入しています。
でも中で働いている者たちは、それらを冷ややかに見ている人が多いのではないでしょうか。
なぜならば利用できる制度があっても、制度を利用しているようでは法人内の競争で勝ち残れないのをよく知っているからです。
監査法人ではパートナーになれなければ、いずれは退職に追い込まれてしまいます。
同期が10人いたとしてその中でパートナーになれるのは、たったの1人です。
ワークライフバランスなんてことを考えていて、この1人の中に勝ち残れるわけがありません。
もし監査法人で定年まで働きたいと考えているなら、死に物狂いで結果を出すことを考えなくてはなりません。
これらの制度を迷いなく利用していいのは、初めから定年まで監査法人で働く気がない人たちであることを忘れてはいけません。
かつてのモーレツ職員は今
スタッフたちは三六協定で守られているのですが、管理職であるマネージャ、シニアマネージャは仕事の裁量権があるとの理由で三六協定の適用対象外とされています。
うまくスタッフたちを使えないマネージャたちは、自ら残業してスタッフたちの分をカバーするしかありません。
でもこんなことをしているといつ過労死してもおかしくないレベルの残業時間が積み上がっていきます。
思えば、かつては私も一分一秒を惜しんで仕事に取り組むモーレツ職員でした。
皆が嫌がるような仕事も率先して引き受けて、長時間労働も厭わず働いてきました。
体調が悪い時でも無理をして仕事を続けた結果、体に後遺症が残ることになっても、そんなことはお構いなしでした。
でも今考えれば、すべてが無意味なことでした。
私の事務所でも働きすぎで「うつ」になってしまった人の話を数年に一度は聞きます。
「うつ」になる原因はさまざまで、仕事にだけ原因があるわけではないのかもしれません。
でも起きている時間のほとんどを仕事に費やして生活する毎日なのだから、やはり原因の一端は仕事にあるように思います。
そして一度「うつ」になってしまうと、その後のライフプランは大きく狂うことになってしまいます。
監査法人で働く会計士たちは、努力を積み重ねて難関試験に試験に合格してきた人たちで、まじめな人が多く、与えられた仕事を一生懸命やろうと努力します。
そんな会計士たちが、無駄に監査法人で使い捨てにならないようにするためには、自己防衛するしかありません。
かつてモーレツ職員だった私は、40代になってこのざまです。
人生の多くを犠牲にして仕事に打ち込んできたにもかかわらず、どこにもたどり着けない今を思うと、こんなに悲しいことはありません。
途中退社が前提で運営されている監査法人
監査法人はほとんどの人が中途退職する前提で運営されています。
そのためさまざまな制度は、定年まで働くことを前提に設計されていません。
あるのはリクルート対策の耳障りの良い話だけで、割を食うのはいつも年齢的に監査法人を辞めづらくなるマネージャ、シニアマネージャです。
私の知人にもう何年も地方事務所を転々と渡り歩かされていて、東京に戻ってこれない人がいます。
子どものことを考えて、家族を東京に残しているので、ずっと単身赴任を続けています。
スタッフの頃なら断る選択肢もあったのでしょうが、40代になり目立った成果を出せない彼には断る選択肢はなく、泣く泣く単身赴任を続けています。
東京で働けている私は、彼よりは幸せなのかもしれません。
私は奥さんとともに子どもの成長をそばで見守ってあげたいと強く思います。
まとめ
短期的にみれば、監査法人にもさまざまな制度がありますので、その時々のライフイベントでこれらの制度を利用することによって、ワークライフバランスを実現できるかもしれません。
でもパートナーになれなければ、監査法人を辞めざるを得なくなることを考えれば、長期的にみれば監査法人でワークライフバランスを実現することは不可能と言わざるをえないと思います。
もしあなたのライフプランが「監査法人で出世すること」ならば、そのまま監査法人で頑張って出世を目指せばいいと思います。
でもその他のライフプランを思い描いているなら、ワークライフバランスを実現できるような従業員を大事にする文化のある会社でのセカンドキャリアを真剣に考えるべきだと思います。
5年も監査をやれば監査のことを語れるはずです。
そこから先に進んでも、たいして得るものはありません。
それよりも市場価値の高い30代半ばまでに転職して、思う存分ライフプランの実現を目指すべきです。
私は取り返しのつかない過ちを犯してしまいましたが、後進の人たちには同じ轍を踏まないようにしてもらいたいです。
私と同じ轍は踏みたくないと思った人は、こちらの記事もどうぞ。
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