こんにちは。
「書いている人」@CPABlogです(プロフィールはこちら)。
大手監査法人では毎年300名程度の新人たちが入所してきます。
その新人たちの中には満足にクライアントにアサインしてもらえず、いつも事務所にいるという状態が続くことがあります。
このような状態になることを監査法人では「干される」というのですが、なぜ「干される」新人たちがいるのでしょうか。
事務勤が続くなんてサイコー!と喜んでいる人はちょっと待ってください。
慢性的な人手不足が続く監査法人でアサインされない日が続くということは、あなたはインチャージに嫌われている可能性が大です。
将来監査法人でパートナーになることを目指すならもちろんのこと、一般事業会社への転職や独立開業を考えている人はなおさら、監査法人で働いている間にさまざまな業務を経験させてもらいスキルの獲得を目指すべきです。
にもかかわらず満足に仕事を与えてもらえない状態が続くのは、不幸というほかありません。
なぜ「干される」ことになってしまったのか、まずは原因を考えなければなりません。
監査法人で干される原因
監査法人で干されるようになる原因には以下のようなことが考えられます。
コミュニケーションを大切にしない
監査に関わったことのない人だと、監査は会議室に公認会計士たちがこもって黙々と作業するものと思っているかもしれません。
でも実際はクライアントの担当者やチームメンバーたちと頻繁にコミュニケーションをとりながら監査は進んでいくものです。
例えば担当している勘定科目で発見事項が見つかったときは、いち早く現場を取り仕切るインチャージにその事実を知らせなければなりません。
にもかかわらず調書にそのことを記載するだけで、インチャージに報告しないスタッフがいると、インチャージはその調書をレビューするまで発見事項を知ることができず、クライアントへの修正依頼などの対応が遅れて大問題に発展することもありえます。
またクライアントの担当者に資料を依頼する時に、出して当然と言わんばかりに上から目線で資料を依頼するスタッフがいると、クライアントからクレームが入ることもあります。
インチャージはパートナーから現場を任されているので、これらのことを非常に嫌います。
そのインチャージがスタッフをアサインするのですから、コミュニケーションを大切にしないスタッフをわざわざアサインすることはありません。
最近アサインが減ったと思う人は、もしかするとこれが原因でアサインが減っているのかもしれません。
責任感が感じられない
新人のうちはいろいろと覚えなければならないことも多く、時には定められて時間内に仕事を完了できないこともあるでしょう。
そんなときに最後まで仕事を完了させず、途中で放り出したりしていませんか。
インチャージは与えられた監査資源をやりくりして監査を意見表明まで進めます。
そんな中予定外に進捗が遅れるようなことがあれば、時には長時間労働も厭わず自らがフォローに回ったりしながら監査を進めていきます。
もちろん新人をアサインする時は、時間内に仕事が完了しないことも想定しながらアサインするのですが、時間内に仕事が終わらないからといって、無責任に仕事を放り出されることまでは予定していません。
放り出された仕事は、結局インチャージやその他のチームメンバーが残業対応して片づけていることを忘れてはいけません。
慣れないうちは時間内に仕事が完了しないことは仕方ないことなのですが、完了していない仕事を途中で放り出すなど責任感の感じられないことをしてしまうと、次からそのインチャージはあなたのことをアサインすることはないでしょう。
自己主張が強すぎる
監査はインチャージがひとりで実施するものではなく、チームメンバーが一丸となって実施するものです。
そのためインチャージは監査チームの「和」を重んじる人が多いものです。
チーム内がギスギスしているといい仕事はできませんので、定期的にチームで飲み会を開催したりしてチーム内の関係を良好に保つための工夫をしているインチャージも少なくありません。
そんな中、他のチームメンバーのことを全く考慮せず、自己主張ばかりするスタッフがいるとチームの「和」が大きく乱れます。
自分の意見を全く言わないのも問題ですが、インチャージは自己主張が強すぎる人のアサインを避けたい事情があることも忘れてはいけません。
自分は自己主張が強い方だと思う人は、アサインが減っていないか、常に注意するようにしましょう。
最低限のルールを守れない
監査法人で働く会計士たちは、常にクライアントの目にさらされていることを忘れてはなりません。
その中でクライアントから評価を得られなければ、監査法人変更などの憂き目にあうこともありえます。
そのためパートナーやインチャージはクライアントからの評価を常に気にしています。
クライアントから評価を得るのは簡単なことではありません。
真に質の高いサービスを提供しなければ、クライアントからの評価を得ることはできません。
でも反対にクライアントからの信頼を失うのは簡単です。
クライアントとの約束を守らないなどすれば、あっという間に信頼を失ってしまいます。
だからこそインチャージは最低限のルールを守れない人を嫌います。
- 遅刻や無断欠勤はしない
- 約束はきちんと守る
- 常識やマナーをわきまえる
これらの最低限のルールを守れない人のアサインは自然と減っていくでしょう。
積極性が感じられない
インチャージは与えられた役割を果たすために常に忙しくしています。
そのためインチャージはチームに貢献してくれるスタッフを好みます。
自分に割り当てられた仕事を手早く片付け、他のメンバーに割り当てられた仕事も積極的に肩代わりしてくれるようなスタッフであれば、多くのインチャージから重用されることは間違いありません。
反対に責任範囲をなかなか広めようとせず、できるだけ新しい仕事を振られないように逃げ回っているような消極的なスタッフのアサインは、徐々に減っていくものだと思います。
あなたは割り当てられた仕事を時間内に終わらせても、新しい仕事を割り振られるだけだとペースを調整しながら仕事をしたりしていませんか。
アサインが減り始めたら要注意
スタッフの生産性を上げるのはパートナーに課せられた役目です。
従って稼働率の低いスタッフが部門にいるならば、パートナーは何とか稼働率を上げようとします。
具体的にはインチャージたちに「もっと○○さんをアサインして使うようにしなさい」と指示して稼働率を上げようとします。
インチャージたちもさまざまなキャラクターのスタッフたちをうまく使って成果を出すことが求められていることはよく理解していますので、単に好き嫌いだけでスタッフを選り好みして使っているわけではありません。
なので一時的にアサインが減ることはあっても「干される」ところまで行くのは、そうそうあることではありません。
にもかかわらずアサインがほとんどない状態が長期間続き、「干される」ところまで行ってしまうのは余程のことだと思います。
「干される」ところまで行ってしまった人は、挽回するのは簡単ではありません。
だからこそアサインが減り始めたところで自ら気付き、またインチャージに繰り返し使ってもらえるように軌道修正しなければなりません。
早期に軌道修正できれば、後を引くことはありませんので、できるだけ早く干される原因に気付き軌道修正することが大切です。
干されないため取り組むべきこと
一度「干される」ところまで行ってしまうと挽回するのは簡単なことではありません。
干されそうな人は、干されるところまで行く前に以下のことを実践するようにしてください。
元気に挨拶する
元気に挨拶しましょう。
こう書くとまるで子どもに言っているみたいですね。
でも大事なことだと思います。
クライアントの担当者はもちろんのこと、所内の同僚たちにもその日初めて会ったときは挨拶するように心がけてください。
そのときに聞こえるか聞こえないかの声でボソボソ挨拶しても効果はありません。
相手の顔をきちんと見て、ハッキリとした声であいさつするようにしましょう。
いつも明るく笑顔を絶やさない
いつも明るく振舞うようにして笑顔を絶やさないようにしてください。
あなたがチームのムードメーカーになれれば、きっとインチャージはあなたのことを重用するはずです。
チームで仕事をするとき、チームメンバーが有する雰囲気は皆さんが思う以上に重要なものです。
私もいつも不機嫌そうにしているスタッフとは一緒に仕事をしたいとは思いません。
仕事を断らない
インチャージから依頼された仕事は断ってはいけません。
できるだけ積極的に受けるようにしてください。
いつも嫌な顔ひとつせずに無理を引き受けてくれるスタッフなら、インチャージはあなたのことを使いたいと思うはずです。
でも仕事を抱え込みすぎて納期を守れない場合は、きちんと事情を説明してその仕事は受けられないことを伝えるようにしてください。
無理に引き受けても納期を守れないと逆効果になりますので、注意が必要です。
謙虚さを忘れずに
いつも謙虚さを忘れないようにしてください。
自信を持つことも大事なことなのですが、それが過ぎると鼻をつくものです。
それよりも自分の分をわきまえて、少し控えるようにするくらいがちょうどいいことが多いと思います。
出しゃばった行動はチームの和を乱すことが多いことを忘れてはいけません。
常に向上心を持つようにする
常に新しいことにチャレンジする向上心を持つようにしてください。
がんばっている人をみると多くの人は応援したくなるものです。
周りの人にも良い影響を与えられるスタッフなら、多くのインチャージがあなたを使ってくれるでしょう。
もし干されてしまったら
一度干されるところまで行ってしまうと挽回するのは簡単なことではありません。
人が一度持った印象を上書きするのは難しいからです。
だからこそ干されるところに行くまでに何とかすべきなのです。
それでも干されるようになってしまったのなら、生まれ変わった気になって、地道に印象を上書きする努力を続けるしかありません。
何年も掛かると思いますがこれを続ければ、きっと周りの人々の印象を上書きできることでしょう。
でも監査法人に入所して間もなく干されてしまうくらいなので、あなたが監査法人で大成するのは難しいように思います。
監査法人でパートナーになれるのは同期10人のうち、たった1人だけです。
このことを考えれば、あなたが監査法人でパートナーになる可能性はほとんどないように思います。
でもこれを嘆く必要はありません。
同期10人のうち残りの9人は結局パートナーにはなれず、いずれは監査法人を去らなくてはならないようになりますので、結局は同じことなのです。
そうであるならばやり直しを模索するよりも、早々に監査法人に見切りをつけて、自分らしく生きられるセカンドキャリアを見つけた方が、幸せになれるのではないでしょうか。
まとめ
監査法人で干されるのは、干されるだけの原因があるはずです。
振り返ってその原因を把握し、反省して、改善することはとても重要なことだと思います。
でも素の自分を隠し、毎日違う人格を演じてまで監査法人にしがみつくだけの価値は本当にあるのかも考えなければなりません。
監査法人は、その特殊さゆえに独自の文化を育んできた組織でもあります。
監査法人の中では「正しい」とされてることでも、社会一般では「正しくない」こともたくさんあることを忘れてはいけません。
監査法人で生きづらいと感じているなら、それはきっと自分らしく生きられる道を探すべき時なのだと思います。
コメント