こんにちは。
「書いている人」@CPABlogです(プロフィールはこちら)。
監査法人で働く会計士の中には、監査法人を居心地がいいと感じている方もいらっしゃるようですが、皆さんはいかがでしょうか。
かく言う私も昔は居心地がいいと思っていました。
監査法人は自主性が尊重される職場なので、私のようなはみ出し者にとっては居心地がいいところだったんですよね。
でも居心地がいいと感じる人ほど気を付けなければなりません。
シニアマネージャになる頃には、居心地のよかった監査法人も見え方が一変しますので、長居することがないようにしなければなりません。
居心地がいいと感じるところ
かつて私が監査法人を居心地がいいと感じていたのは以下のような理由からです。
「ゆるい」職場
監査法人では職員は複数のチームにアサインされ、日替わりで違うメンバーと働くのが一般的です。
またクライアントへ直行直帰することも多いことから、基本的に日々のスケジュールは自分以外は誰も把握していません。
もちろんアサイン表はありますので、自分のスケジュールは他の人にも見られるようになっているのですが、人手の足りない繁忙期以外は他人のスケジュールを気にするような暇な人はいません。
そのような事情もあって、監査法人では一般事業会社に比べると職員の自主性に任されている部分が多く、かなり自由度が高い職場だと言えると思います。
事務勤の日には、まるでクライアントに寄ってから来たかのような顔をして席に着けば、それが昼前であっても誰も何もいいません。
また往査予定が変更になった場合もアサイン表を更新せずに事務所でまったり過ごすなんてことも簡単にできてしまいます。
インチャージになり自らアサインを決めることができるようになればやりたい放題です。
ダミーで往査予定を入れておきながらこっそり休むなんてことは日常茶飯事で、私も昔はよくやっていました。
割り当てられた仕事は期日までにきっちり仕上げることが大前提ですが、そうしている限り、自由に立ち振る舞うことが許されるのは監査法人ならではですね。
修行しながらもらえる高給
ご承知のとおり、公認会計士試験に合格してすぐに公認会計士として活躍できるわけではありません。
公認会計士として一人前になるためには、さまざまな実務を経験しながらスキルを高めていくことが必要です。
この公認会計士としてのスキルを高めるのに最適な場所が監査法人であり、試験に合格した人のほとんどが監査法人へ入所します。
このようにスキルを獲得するために入所した監査法人ですが、一年目のスタッフでも残業が多い人なら年収が600万円を超えることも珍しくありません。
一般的に25歳の年収は300万円から350万円と言われていますので、監査法人で働くスタッフたちの給料が非常に高いことがよく分かります。
これはスタッフに限ったことではありません。
シニアでも残業の多い人なら年収は800万円くらいになりますし、マネージャなら評価の高い人の年収が1,000万円を超えることも少なくありません。
一人前の公認会計士になるために監査法人で修行させてもらっているにも関わらず、これだけの高給がもらえるというのは非常に恵まれていると思います。
淡白な人間関係
監査報酬が数億円になるようなビッグクライアントに専任でアサインされない限り、監査法人で働く職員は複数のクライアントにアサインされ、一緒に仕事をする先輩や後輩たちも日替わりになるのが普通です。
そのため監査法人では濃密な人間関係に悩まされるようなことはなく、ちょうどいい距離感を心地よいと感じている人も多いのではないでしょうか。
一般事業会社では同僚たちと毎日顔を合わせるのが普通であることから、社内コミュニケーションが重視されています。
社内コミュニケーションを円滑にするためにさまざまなイベントが企画されるのですが、それらに参加しないとすぐに「変わった奴」扱いされてしまいます。
でも監査法人ではそのようなことはありません。
チームで飲み会があったとしても、気が乗らないときは気兼ねなく断ることができます。
毎日顔を合わせていれば、相手に対して思うところを持つようになるのが人間です。
でも週に1、2回しか会わないのであれば、そのようなことはありません。
監査法人では希薄とも思えるくらい淡白な人間関係が普通であるということも、私にとっては監査法人が居心地のいい理由でした。
シニアマネージャになる頃には見え方が一変する
仕事上での評価もそれなりに得られていたこともあり、シニアマネージャになる頃まではそんな自由度の高い監査法人での仕事を楽しんでいました。
でもそれはパートナーから監査の仕事を与えられていたから楽しめたに過ぎません。
シニアマネージャになった後、パートナー登用の目がなくなるとともに、後進に経験の場を譲るという名目でそれまで担当していた監査業務をすべて引きはがされることになるのですが、仕事が与えられない中での自由ほど苦しいことはありません。
パートナーから私への指示は、「自分の食いぶちは自分で見つけるように」ということだけです。
新しい契約をとってくる方法は、最低限のルールを守ることが要求されているだけで、すべて私に任せられています。
そんな中でさまざまな試行錯誤を繰り返しながらなんとかここまでやってきましたが、これ以上続けることは心を病んでしまいそうで難しいようです。
自由度が高く働きやすいと思っていた監査法人でまさかこんな結末が待っているとは思いもしませんでした。
やることが決まっている中で自由がある、そんな幸せなことがいつまでも続くことはないことはみなさんにも理解しておいてほしいと思います。
まとめ
かつて私がまだ監査の仕事をメインにしていた頃、監査法人の管理がゆるいことをいいことに、好き勝手にやっていた時期がありました。
このときは本当に仕事が楽しく、監査法人でずっと働きたいと思ってしました。
でもパートナーになる目がなくなった今、何も決まったものがない中ですべてを自分で発想し作り出すことが、こんなに苦しいことだとは思いもしませんでした。
私はこれまでパートナーになるために全精力を注ぎ込んできたというわけではありませんでした。
だからこそ仕事を楽しいと感じ、監査法人でずっと働きたいと思えていたのだと思います。
もしかつての私がパートナーになるために全精力を注ぎ込んで仕事に向かい合っていたなら、それに耐えられずとっくに監査法人を辞めていたでしょう。
あなたが今、監査法人で居心地よく仕事をしているなら、本当にそれでいいのか、自分に真摯に問いかけるようにしてください。
パートナーになることができないようなら、監査法人に長居は無用ですよ。
自分もパートナーにはなれそうもないと思った人は、こちらの記事もどうぞ。
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