監査法人のパートナーが監査をがんばらない理由【悲しい現実】

こんにちは。

 

東芝事件を契機に監査の品質向上が叫ばれるようになってしばらく経ちますが、皆さんの周りのパートナーたちは一生懸命監査をやっていますか?

 

私もほそぼそと監査をやっているのですが、私がインチャージを務めている会社の業務執行社員たちは相変わらず監査はやりません。

 

そんな私のプロフィールは以下のとおりです。

 

  • 90年代後半に第二次試験に合格し、大手監査法人に入所
  • 監査業務を中心にIPO支援、その他コンサルティング業務にも従事
  • バックオフィス系部署や地方事務所での勤務、大手監査法人間での転職も経験
  • ほぼ規定年数でシニアマネージャまで昇進

 

監査の品質向上が叫ばれるようになって久しいのですが、私の周りのパートナーたちは相変わらず監査をやらず、現場任せで監査が終わっていっています。

 

なぜパートナーたちは最終責任を負わなくてはならないにもかかわらず、監査をやらないのでしょうか。

 

今日は監査をやらないパートナーについて掘り下げてみたいと思います。

 

業務執行社員の役割

私が現在インチャージを務める会社の年間監査時間は2,000時間程度です。

そのうち業務執行社員の関与時間は二人合わせて100時間もありません。率にすると総時間の5%にも満たないのです。

そんな業務執行社員ですが、以下のような業務を行っています。

経営者、監査委員とのディスカッション

経営者とのディスカッションや監査委員とのディスカッションについては、業務執行社員もさすがに同席します。

業務執行社員も経営者や監査委員との重要な接点と考えているようです。

 

ただし監査上の重要な手続きという意味ではありません。

監査契約の意思決定権限者たる経営者や監査委員に対して、パートナーたちが自分の存在感を示す数少ない機会と捉えているようです。

そんな数少ない機会を捉えてきっちりアピールしていくパートナーたちは、ある意味すごい人たちなのかもしれません。

監査報告会

会社法監査が終わった段階で監査委員に対して実施する報告会についても、特別なことがない限り業務執行社員も同席したがります。

報告会は一年間実施してきた監査の最終局面(有価証券報告書のチェックは残っていますが)に実施されるものであり、表明する監査意見については自ら伝えたいと思っているようです。

一方でここまでほとんど関与してこなかったパートナーに「おいしいところ」だけ持っていかれるような錯覚に陥るのは、私だけではなく多くのインチャージたちが感じるところではないでしょうか。

調書レビュー

私が新人だった頃は、パートナーは調書レビューをしていませんでした。

パートナーが自ら手続きを実施することはありませんので、スタッフやインチャージが作成する監査調書のレビューを通じて心証を形成していくのが通常です。

にもかかわらず調書レビューを実施しないということは、昔は今以上のパートナーたちは監査を実施していなかったということなのでしょう。

 

しかしながら監査の品質向上が叫ばれる現在においては、さすがにパートナーたちも重要な監査調書についてレビューを実施します。

四半期決算で2、3時間程度、年度決算で4、5時間程度の時間をかけて調書レビューを実施しているようです。

懇親会

年に数回、クライアントと懇親会を開催しているのですが、パートナーも出席したがります。

インチャージやスタッフは、頻繁にクライアントへ伺っていることから、役員や従業員たちと簡単に接点を持つことができます。

ところがパートナーはクライアントを訪問する機会も少なく、放置しておくと役員や従業員との関係がどうしても希薄になりがちです。

これを補うために、パートナたちは打ち解けた話ができる懇親会等の機会を見逃しません。

ただし参加メンバーにキーパーソンがいない場合は、興味を失ってしまうらしく、参加することはまずありません。

 

またチームで打ち上げ等をにもパートナーは参加したいようです。

パートナーはマネージャクラスとは多くの接点があるのが普通だと思いますが、スタッフとゆっくり話をする機会もなく名前もろくに覚えていないこともよくあります。

このような状況の中で、パートナーは職員たちをマネジメントしなければなりませんので、ゆっくり話ができる打ち上げ等は良い機会であり、率先して参加するようにしているようです。

 

業務執行社員の仕事はイベントへの参加と調書レビューが中心

 

監査ができないわけではない

私が新人だった頃、監査ができないパートナーがたくさんいました。

正確に言うと新しい会計基準についていけないパートナーたちがたくさんいました。

会計基準を理解していないから、あるべき会計処理も分からず、当然ながら監査なんて成立しません。

連結財務諸表のない時代に会計士になったパートナーの中には、連結を全く理解していない人もいたくらいです。

 

そんなパートナーたちはリーマンショックの時に真っ先にリストラされました。

したがって今の監査法人にはそのようなパートナーは残っていません。

みんな忙しい中、会計基準のアップデートを必死にやっています。

 

ではなぜパートナーたちは監査をやらないのでしょうか。

 

昔は監査ができないパートナーもいたが、今はいない

 

監査を頑張っても評価されない

パートナーたちが監査を一生懸命やらないのは、監査を一生懸命やっても評価されないからです。

 

監査で問題を起こすと致命傷になり、最悪、首になってしまいます。

なので問題が起きない程度に監査に注意を払っています。

 

 

でもそれ以上監査を一生懸命監査をやっても監査法人で評価されることはありません。

それどころか監査ばかりやっていると「あいつは監査しかできないから」と蔑まれてしまいます。

 

そんな時間があるなら、非監査業務を受注してきたほうがよほど評価されます。

あるいはマネジメントに力を入れ、職員たちの生産性を高める施策を考えた方がよほど評価されます。

 

これが監査法人のパートナーが監査をやらない最大の理由だと思います。

 

監査でがんばっても評価されることはない。これが監査をがんばらない最大の理由

 

監査の社会的使命とは

監査は健全な資本市場の発展を支える公益性の高い社会インフラとして機能する必要があります。

にもかかわらず四大監査法人でさえ、自らの営利を追求し、監査をないがしろにしているのが現状です。

 

パートナー自らが手続きを実施すべきとは思いません。

でももっと時間を掛けて会社のことを理解してリスクを見極める必要があるのではないでしょうか。

あるいは現状の穴だらけの手続きを見直し、リスクに見合った手続きを再構築する必要があるのではないでしょうか。

 

まともな監査を実施していなくても問題が起きなければそれで良い、そんな考えを続けていると、いつか自分たちの首を絞めつけることになるように思えてなりません。

社会的使命をないがしろにしてまで、自己の利益を追求することが許されるわけがありません。

 

社会的使命をないがしろにしてまで、自己の利益を追求することが許されるわけがない

 

まとめ

ここ数年、東芝事件を契機にどの監査法人も監査の品質向上に取り組んできました。

でも新型コロナウイルスの影響でこの先、監査報酬が伸び悩むことが目に見えています。

そうすると監査法人の経営層にいる人たちは、また非監査業務の拡大を声高に叫び始めるのでしょう。

 

試験に合格するまでは、公認会計士の仕事は世の中の役に立つ仕事だと思っていました。

でも現実は出世欲にまみれた経営層にいる会計士たちによって、監査は食いものにされているように思えてなりません。

パートナーの中には疑問を持ちながらも、生活のために現状を甘んじて受けている方もいらっしゃるように思います。

 

このような監査法人に未来はありません。

 

若い会計士の皆さんは自分自身を守るためにも、やり直しが可能なうちにセカンドキャリアについて真剣に考えるようにしてほしいと思います。

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