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監査法人で働く会計士の「やめ時」【失敗しないための退職時期とは】

こんにちは。

「書いている人」@CPABlogです(プロフィールはこちら)。

 

 

監査法人で職員のまま定年まで働けた会計士を、私は見たことがありません。

この記事を読んでいる皆さんも、同じではないでしょうか。

 

監査法人には毎年200名前後の新人会計士たちが入所します。

このうちパートナーになれるのは一割程度で、残りの九割の会計士たちは、監査法人をやめていっています。

 

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私も間もなく監査法人を去ることになるのでしょう。

 

 

私は「頑張ってさえいれば何とかなる」と楽観的に考え、監査法人で働き続けた結果、今になって苦しい立場に追い込まれています。

 

こんなことになるのが分かっていたら、もっと早くにキャリアプランを見直したのですが、気が付くのが遅く、その機会を失ってしまいました。

 

では監査法人の「やめ時」はいつだったのでしょうか。

 

考えられるタイミングは以下くらいです。

  • 修了考査合格時(入所後3年~)
  • シニアスタッフ昇格後(入所後5年~)
  • マネージャ昇格時(入所後8年~)
  • シニアマネージャ昇格時(入所後13年~)

 

でもいつが良かったとは一概には言えないものですね。

退職後のキャリアプランの選び方次第で、最良のタイミングは異なるからです。

 

以下ではそれぞれのタイミングの特徴とキャリアプランごとのベストな「やめ時」について整理していきたいと思います。

 

監査法人を退職する最良のタイミングは、選ぶキャリアプラン次第。ケースごとに異なるタイミングを見逃さないで。

たくさんあった「やめ時」

それぞれの「やめ時」について、「将来性」と「スキル」の二軸で特徴を整理してみました。

修了考査合格時(入所後3年~)

最初の「やめ時」は、修了考査(私の時代は三次試験)合格時です。

 

「試験合格者(私の時代は会計士補)」から「公認会計士」になるためには、実務経験や実務補習、修了考査合格が必要です。

 

監査法人で働いていれば、普段の仕事が実務経験になります。

また補習所の時間も配慮してもらえますし、修了考査前には試験休暇をもらえます。

合格者の多くが監査法人に就職する理由はここにあります。

従って修了考査が終わるまでに監査法人をやめていく人はほとんどいません。

 

ところが修了考査に合格しさえすれば、この縛りはなくなります。

そしてこのタイミングが一番最初の「やめ時」になります。

 

25、6歳までに監査法人に入所していれば、修了考査合格時でも20代で将来性については高い評価が得られます。

一方でスキルについては、ようやく監査が分かりかけてきたくらいで、スキルというほどのものはまだ得られていない人がほとんどです。

 

将来性:★★★★★

スキル:★☆☆☆☆

 

修了考査終了直後は一番最初の「やめ時」。将来性が最も高く評価されるタイミングだが、一方で特段のスキルを有していない人がほとんど

シニアスタッフ昇格後(入所後5年~)

シニアスタッフに昇格して1、2年したころが、第二の「やめ時」になります。

計画から手続実施、意見形成まで監査調書はひととおり作成でき、会社法監査の主査を務めているくらいのイメージです。

 

年齢的には30代になったばかりの頃でしょう。

この頃には、主査として2~5名程度のチームマネジメントも経験しているはず。

またクライアントとの折衝を行った経験もあり、ある程度コミュニケーション力も身についていると思います。

 

将来性やこれまでに獲得したスキルを考えれば、労働市場において市場価値が高まってくるタイミングです。

 

将来性:★★★★☆

スキル:★★★☆☆

 

シニアスタッフクラスなら、将来性に関する評価はまだまだ高い。その上、マネジメント力やコミュニケーション力など、スキル面でも評価を得ることが可能。

マネージャ昇格時(入所後8年~)

監査法人に入所し、8年も経てばマネージャに昇格するのが通例です。

この頃には年齢も30代半ばに差し掛かっていることでしょう。

 

マネージャに昇格する頃には、金商法監査の主査を務めた経験のある人がほとんどです。

金商法監査では、チームメンバーも5人~10人、大企業になると20人以上のチームメンバーをマネジメントすることになり、それなりのマネジメント力が身についているはずです。

 

またこれまでに数多くのクライアントに関与し、さまざまな事例を見てきていることと思います。

多くの事例を知っていることが公認会計士の強みであり、企業が欲しがる知見でもあるのです。

 

労働市場においても、管理職経験のある公認会計士の市場価値は高く評価されています。

 

将来性:★★★☆☆

スキル:★★★★☆

 

マネージャクラスは数多くの他社事例を知っているなど、企業が欲しがる知見を有しており、労働市場での市場価値は高い。

シニアマネージャ昇格時(入所後13年~)

この頃には監査以外の業務に携わる機会も多くなります。

 

年齢的には40代に突入する人も出てくるのではないでしょうか。

 

私もシニアマネージャに昇格する少し前くらいから、システム導入や内部統制構築、決算早期化、内部監査の立ち上げ、新会計制度対応など、監査以外のさまざまな業務に携わる機会が増えました。

 

監査業務は一連の流れが決まっていて、その流れどおりに進めれば、失敗することはありません。

一方で監査以外のさまざまな業務はすべてがオーダーメイドです。

 

私もこれらの業務を数多く経験することによって、企画力やマネジメント力、コミュニケーション力が高まったように思います。

 

一方でここまでくると、年齢的にも将来性について期待されることなくなり、持っているスキルで市場価値が決まります。

 

将来性:☆☆☆☆☆

スキル:★★★★☆

 

40代に将来性は期待されない。これまで獲得してきたスキルによって労働市場での市場価値が決まる。

選択するキャリアプランによって異なる「やめ時」

上記のように「やめ時」はたくさんあります。

でもこれらのうち、どのタイミングで監査法人をやめるのがベストなのでしょうか。

 

答えは、選択したキャリアプランごとに異なります。

独立開業

独立開業を目指すなら、修了考査合格後がベストな「やめ時」です。

 

なぜなら税務やコンサル業務で必要とされるスキルを一刻も早く身に付けるべきだからです。

 

修了考査を受ける頃には、監査が面白くなってくるので、ついつい長居してしまいがちです。

でもここで無駄にする時間はありません。

 

独立開業後に監査業務を受注することは、ほとんどありません。

受注できても幼稚園などの学校法人や社会福祉法人の監査など、小規模なものがほとんどです。

これらの監査なら、修了考査に合格するまでの経験で十分対応可能です。

 

監査法人で働いた後、いきなり独立開業することも可能ですが、ノウハウがまったくない状況で独立開業すれば、後で苦労することになってしまいます。

したがって、必要となるスキルをしっかり身に付けてから、独立開業することが必要です。

 

監査法人系の税理士法人やコンサル会社へ転職するのも一つの方法だと思いますが、クライアントが大企業であることがほとんどです。

なので独立開業後に自分のお客さんになる可能性のある中小企業を顧客にしている独立系の税理士法人や個人会計事務所で経験を積むのが手っ取り早いです。

 

独立開業を目指すなら、寄り道している時間がもったいない。修了考査に合格したら、すぐに独立系の税理士法人や個人会計事務所へ転職し、必要とされるスキルを身に付けよう。

 

上場企業

上場企業で働きたいと考えるなら、シニアスタッフ昇進後がベストの「やめ時」です。

 

上場企業では、開示書類等を作成する経理はもとより、内部監査室や経営企画室などさまざまなセクションで公認会計士のニーズがあります。

 

上場企業の場合、いきなりCFOや部長職として入社することはあまりなく、プレーヤーとして入社することになるのが一般的です。

そして将来の管理職候補として、その他資のメンバーと一緒に働くことになります。

 

そのため採用する企業側からするとスキルよりは、将来性を重視することが多いです。

 

一方、企業が公認会計士を雇うのは、公認会計士が持つ会計や管理に関する高度な知識や、豊富な他社事例に関する知見などに期待しているからです。

このことを考えると、修了考査合格直後よりは、シニアスタッフクラス程度の経験を積んだ会計士の方が望ましいでしょう。

 

上場企業では公認会計士の知見に期待している。シニアスタッフクラスが将来性とスキルのバランスが良く、ニーズが高い。

ベンチャー企業

ベンチャー企業で働くことを考えるなら、マネージャ昇進後がベストの「やめ時」です。

 

ベンチャー企業は従業員が数名から多くても50名程度までの小さな会社です。

このような会社は管理体制がほぼありません。

これを一気に解決するために、経営者は公認会計士を雇い、管理部門全般を任せることを考えます。

したがってベンチャー企業で働く場合は、管理本部長やCFOとしての活躍を期待されるケースも少なくありません。

 

このことを考えれば、ある程度のマネジメント経験が必要となり、管理職経験を積んだ公認会計士が望ましいでしょう。

 

ベンチャー企業で働くと、管理部門全体を任せられることも。ある程度のマネジメント経験が求めれることから、マネージャクラスの経験を有する会計士のニーズが高い。

 

コンサル会社

コンサル会社で働くことを考えるなら、修了考査合格直後か、シニアスタッフ昇格後がベストの「やめ時」です。

 

コンサルタントと一口に言っても、守備範囲はさまざまです。

  • 総合系コンサルタント
  • FAS系コンサルタント
  • 再生系コンサルタント
  • 戦略系コンサルタント

 

会計士がコンサルタントを目指すなら、上記のいずれかだと思います。

 

目指すコンサルタントに必要なスキルが、会計や財務、監査から得られるのであれば、シニアスタッフまで経験を積み上げても良いと思います。

 

一方戦略系のコンサルタントなどを目指す場合、必要とされるスキルは監査法人で学ぶことができません。

したがって修了考査合格後、速やかにコンサルファーム等への転職を考えるのが近道です。

 

コンサルタントを目指すなら、基本はシニアスタッフまでがんばろう。ただし戦略系コンサルタントを目指すなら、いち早くコンサルファーム等へ移るべき。

まとめ

監査法人の「やめ時」は、その後に何をするのかによって、さまざまです。

それぞれのタイミングが常にベストというわけではなく、ケースバイケースです。

上記は参考程度に留めておき、それぞれのケースでベストなタイミングを捉えるようにしてください。

 

リスクを恐れて監査法人から飛び出せなければ、私と同じでゆでガエルになるだけです。

労働市場における市場価値が高いうちに、次のキャリアプランを見つけるようにしてください。

 

もし間違ったと思ったなら、監査法人に出戻って、考え直すことも可能です。

 

恐れることなく、最初の一歩を踏み出してほしいと思います。

 

 

 

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