こんにちは。
「書いている人」@CPABlogです(プロフィールはこちら)。
私は定年まで監査法人で働くつもりで、ここまでやってきました。
これまでの監査法人から得てきた評価なのですが、不得意なことはありつつも、おおむね平均を少し上回るくらいの評価は得てきたと思います。
みんなが嫌がるような仕事も率先して引き受けたりして、自分なりに精一杯働いてきたつもりです。
でも平均を少し上回る程度では、やっぱりパートナーにはなれないようです。
会計士になったからには、一度は上場会社の監査報告書にサインしてみたいとは思っていましたが、諦めるしかなさそうです。
一方でシニアマネージャの給料でも十分にやっていけるので、このまま定年まで働き続けられるなら、それはそれでよいかもと考えていました。
でも監査法人でパートナーになれない者に居場所は残されていませんでした。
私はこの事実に気付くのが遅すぎたため、今になって苦しい立場に追い詰められています。
なぜ一生懸命がんばってきたのに、定年まで監査法人で働き続けることはできないでしょうか。
これには業界がもつ構造的問題が大きく関係しています。
経済成長を大幅に超える会計士の増加
今の日本に公認会計士が何名くらいいるか知っていますか?
私が監査法人で働き始めた頃は17,000人程度だったのですが、現在では38,000人を超えています。
公認会計士の数は、たった20年の間に倍以上に増えているのです。
一方で日本経済はこの20年間デフレに喘ぎ、思うような成長を遂げられず上場会社数は伸び悩んでいます。
公認会計士の数と上場会社数がバランスよく推移すれば、定年まで監査法人で働けるのだと思います。
でも現実には経済成長をはるかに上回るペースで会計士の数を増やし、私のように監査法人で居場所を失う会計士を多数生み出してしまったのだと思います。
でも現実は経済成長を大幅に上回るペースで会計士を増やしたため、苦しい立場に追い込まれる会計士を多数生み出している
監査法人は会計士の職業訓練所
監査法人は試験合格者たちを一人前の会計士に育てるという社会的使命を担わされています。
監査が独占業務であり、かつ寡占化が進んでいる中では、会計士を一人前に育てられるのは監査法人だけです。
このことを考えれば、監査法人が会計士の職業訓練所として機能することが求められるのは、仕方ないのかもしれません。
試験合格者たちも昔は毎年700名程度だったものが、最近では1,300人を上回っており、倍近くに増加しています。
この増え続ける新人たちを監査法人は新陳代謝を繰り返しながら、吸収し続けなければならないのです。
リーマンショック後に大量リストラを行った年度ですら、多くの試験合格者たちを採用したのは記憶に新しいところです。
実際に金融庁や会計士協会からも定期採用に関して強い要請があるそうです。
私が苦しんでいるのは、監査の仕事はさせてもらえず、自分の食いぶちを自分で探すことが求められているからです。
もし今でも監査の仕事を続けさせてもらえるなら、こんなに苦しむことはありません。
当たり前の話ですがこれまでの経験がある分、後輩たちよりもずっと上手に監査を回すことができると思います。
でも私も先輩たちから経験の場を譲ってもらえたから、今の自分があるのだと思います。
今度は私が後輩たちに経験の場を譲らなくてはならないのだと思います。
自分がそうであったように、いつかは後進に道を譲らなくてはならない
独立開業を取り巻く環境の変化
監査法人からのイグジット先として誰もが思いつくのが独立開業だと思います。
この独立開業を取り巻く環境も、昔と今では大きく変わっています。
私が会計士になったばかりの頃は、会計士や税理士の数も今ほど多くなく、競争も激しくなかったことから、独立開業のハードルは今ほど高くありませんでした。
また監査もゆるかったので、会計や監査以外のことに多くの時間を割けた時代でもありました。
クライアントから税務の質問を受けることも多く、会計士は皆、税務の勉強に多くの時間を割いていたように思います。
今考えれば、監査法人で働く中で独立開業の下地を作ることができた時代だったのだと思います。
ところが今は監査が厳格化され、多くの時間を使って監査調書を作りこむことが求められています。
また会計基準も頻繁に改定されることから、これらのキャッチアップに多くの時間を割かなくてはならず、税務に関する知識の習得に回す時間は残されていません。
加えて会計士や税理士の数は倍増しており、独立開業しても差別化を図らないと食っていくことができない時代になっています。
これらのことが結果的に独立開業のハードルをあげているのだと思います。
昔は独立開業が当たり前だったため、そもそも監査法人に残る人が少なく、残りさえすれば誰もがパートナーになれていました。
現在は独立開業のハードルが上がり、監査法人に残りたいと考える人が増えているにも関わらず、組織構造が変わらないため、問題は深刻化しているのだと思います。
雇用維持のための仕組みを持たない監査法人
監査法人では、パートナーになることができない私に居場所は残されていません。
官僚の天下り先や金融機関の出向先のように、監査法人にも雇用を安定化させる仕組みがあれば良かったのですが、監査法人にはありません。
天下りや出向については批判もあります。
しかしながら雇用を安定化させるこれらの仕組みがなければ、出世競争に負ければ路頭に迷うことになってしまいます。
これでは優秀な人材が集まることはありませんので、優秀な人材を確保する手段として、天下りは意味があるのだと思います。
昔は独立開業すれば簡単に食えていたため、監査法人では雇用を安定化させる必要性もなかったのだと思います。
でも時代は変わり、独立開業のハードルは上がり、監査法人に残りたいと考える人は確実に増えています。
そうであるなら雇用を安定させる仕組みを監査法人でも作るべきだと思うのですが、現在はこのような仕組みはありませんし、この先も用意されるとは思えません。
結局、自分の身は自分で守るしかなさそうです。
まとめ
監査法人ではパートナーに登用されない限り、業界が持つ構造的問題のため、定年まで働くことはできません。
パートナになるのも無理ゲーなのですが、それでもパートナーを目指すというなら、試しにやってもるのも良いと思います。
でも無理ゲーに参加する気がそもそもないなら、早いうちにセカンドキャリアについて考えるべきです。
独立開業するにしても、監査法人で必要なスキルを身に付けるのは難しいため、もうワンステップが必要になることがほとんどです。
将来を見据えたキャリアが形成できるように、タイミングを逃さず、行動するようにしてください。
そうすれば、きっと私とは違った会計士人生を歩むことができると思います。
自分も定年まで監査法人で働けそうにないと思った人は、以下の記事もどうぞ。
コメント