こんにちは。
「書いている人」@CPABlogです(プロフィールはこちら)。
監査法人の仕事がつまらない。
一緒に働いているスタッフたちの多くがこういう思いを持っています。
- 試験勉強をしていた頃は、もっとやりがいのある仕事だと思っていたのに…
- 何年も苦労してようやく試験に合格して取った資格なのに…
- 周りは楽しそうにやっているのに「つまらない」と感じる自分がおかしいのか…
中には自分を信じられなくなってしまうような切実なものまであったりして、他人事ながら心配になってしまいます。
なぜ多くのスタッフたちが監査法人の仕事をつまらないと感じるのか。
今日はこのことについて、深堀してみたいと思います。
私の周りにいるスタッフたちと同じように監査法人の仕事をつまらない、と感じている人たちの参考になれば幸いです。
監査法人の仕事がつまらない理由
なぜスタッフたちは監査法人の仕事をつまらないと感じるのか。
それは以下のような理由からだと思います。
意味のない監査手続
皆さんがアサインされているクライアントで、以下のような監査手続を実施していませんか?
- 内部統制監査で整備状況の評価と言いながら、担当者に話を聞く時間は与えられず、いきなり運用テストを兼ねたサンプルの検証を求められる
- 内部統制監査の運用テストでは、昨年と同様にサンプルを集め、リストを更新することが求められる
- 各勘定科目の調書は基本的に前期調書の数字を更新して作成することが求めらる
- 会社のビジネスをよく知らされないまま、注文書と受領書による売上高の検証を求められる
- 会社の退職金制度をまとめた調書が存在しない中、退職給付の検証で残高確認書との照合を求められる
- 有価証券報告書など開示書類のチェックで、膨大なチェックリストを使ったチェックを求められる
今の監査現場で求められていることはこういうです。
心あるスタッフが良かれと思って手続を深化させると、インチャージから「勝手なことをするな」と叱られることもあったりします。
時間が余っているなら余計なことをするより他の科目をつぶしてほしいと、全体の進捗を管理するインチャージが考えるのは仕方ないことなのかもしれません。
でもこんなやり方で監査を実施していたら、つまらなくて当然です。
普通じゃない上司
会計士になるためには、貴重な学生時代の膨大な時間を犠牲にして試験に合格しなければならず、これに合格できる人たちは、自分も含めてやっぱり少し変わっているのだと思います。
そのためか会計士の多くが、一癖も二癖もあるように思います。
以下私が実際に見てきた一癖も二癖もある会計士たちです。
- 日中は現場に現れず行方不明、夕方になって現場に現れたと思ったら強引に部下たちをさらって朝方まで飲み歩き、翌日の日中はまた行方不明
- 後輩からお金を借りて、強く返済を求められないことをいいことに返さない
- 仕事を部下に押し付け、事務所に戻ると言いながら行方不明
- 気に入った女性部下を執拗にアサインするセクハラ行為
- 面倒だからという理由で部下の面倒を一切見ずに放置プレイ
- 気に食わない部下に年次に不相応な困難な業務を割り当てるパワハラ行為
- 失敗の責任をとらないどころか部下のせいにする
- 保身のために不要な手続を追加し、その対応のために部下が残業
- パートナーの顔色ばかりうかがい、部下を顧みない
- とにかく行方不明になる(笑)
監査法人は管理がゆるいことをいいことに、すぐに行方不明になる先輩がいたのですが、よく尻ぬぐいをさせられました。
ずいぶん時間がたつのですが、まだ根に持っているみたいですね(笑)
こんな上司の下で働いていると、スタッフたちのモチベーションはダダ下がりですよね。
監査法人で「監査」は評価されない仕事
上記のような状況の中、スタッフたちが「監査の仕事はつまらない」と感じるのは当たり前のことだと思います。
でも監査がつまらない本質的な原因は、監査法人で「監査」が評価されていないからに他なりません。
もちろん大きなクライアントを新規で獲得してくれば、法人内での評価は一気に高まります。
最近でも大和ハウス工業が会計監査人を変更していますが、新しく獲得したEY新日本のパートナーの評価は一気に高まっていることでしょう。
メンバーファームへの支払いも含めればグループ全体での監査報酬が5億円弱、非監査業務も含めれば7億円を超える報酬を支払っていたようですので、契約を獲得したパートナーの給料も一気に上がり、笑いが止まらないでしょうね。
でも過去に獲得した既存クライアントの監査は、他法人に契約をひっくり返されないために、問題を起こさないことが求められているにすぎません。
パートナーたちもバカではありませんので、評価されないことはやりません。
監査は程々にして、残った時間で新規クライアントの獲得に奔走しています。
そんなパートナーの下でスタッフたちが、監査にやりがいを感じるわけがありません。
マネジメントが目指すのはいつの時代も「拡大」
現在の監査法人はどこも50代あるいは60代の古い価値観を持つ会計士たちが経営の舵を握っています。
彼らが考えるのは常に法人の「拡大」です。
なぜ彼らは常に「拡大」を目指すのでしょうか。
監査法人はこれまでに幾度となく合併を繰り返し、現在の四大監査法人を中心とする体制が築かれてきました。
合併は対等になされるものもありましたが、多くのケースで強者が弱者を吸収する形で行われています。
このような合併が繰り返される時代を経験した者は、強者でなければ生き残れないという事実を身をもって経験した人たちなのです。
2007年にみすず監査法人(旧中央青山監査法人)が解体され、PwCあらた監査法人が設立されて以降、監査業界は安定しており、目立った動きはありません。
寡占化の弊害を考えると、大手監査法人同士のこれ以上の合併は、金融庁が認可しないでしょう。
このような現状を考えるともはや「拡大」を目指す意味はないように思います。
にもかかわらず現在のマネジメントたちは、海外のメンバーファームに飲み込まれないようにするためと称して、依然として「拡大」を目指して監査法人の舵をとっています。
事業会社にとって「拡大」は最も分かりやすい経営ビジョンです。
「拡大」の先に従業員の幸福があると言われると、反論しづらいため、従業員を一方向へ向かわせるのに使われる常とう手段だと思います。
でも本当に「拡大」の先に、我々の幸福があるのでしょうか。
私には、彼らが自身の出世欲を満たすことにしか興味がないように思えてなりません。
まとめ
監査法人のマネジメントたちが目指すこの「拡大」路線を楽しめるなら、監査法人で大成する可能性は十分あると思います。
スタッフのうちに監査はマスターし、その後はさまざまなスキルを身に付けるようにしてください。
海外での経験も重要なので、若くして海外駐在を実現できるように、英語力も高めておくようにしてください。
そしてシニアマネージャ―になる頃には、それまでに培った経験をもとにして、ビッグクライアントにコンサル業務で入り込み、最終的に監査契約をひっくり返せるような会計士を目指して、計画的にキャリアを積み重ねるようにしてください。
そうすればきっと監査法人で大成することでしょう。
反対に「拡大」路線を楽しめないなら、今すぐ自身のセカンドキャリアについて真剣に考えるべきだと思います。
楽しめる仕事だからこそ、熱中して大成できるのであって、熱中できない仕事で大成することはありえません。
もし若くして監査法人の仕事がつまらないと感じるなら、さっさと次の楽しめる仕事を見つけるべきです。
そうでなければ私と同じように40代になって居場所を失い、苦しむことになってしまいますよ。
自分は「拡大」路線は楽しめないと思った人は、こちらの記事もどうぞ。
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