こんにちは。
「書いている人」@CPABlogです(プロフィールはこちら)。
監査法人で働いているスタッフやマネージャの皆さんの中には、がんばっていればパートナーになれると信じている方も多いのではないでしょうか。
でも今の時代に普通の公認会計士が監査法人でパートナーになるのは、はっきり言って無理ゲーです。
私は気付くのが遅すぎました。
最初から無理ゲーだと分かっていれば、もっと別のキャリアプランを考えていたのに。
今日は、なぜ普通の公認会計士が監査法人でパートナーになるのが無理ゲーなのか、書いてみたいと思います。
「このまま働いていてパートナーになれるのだろうか」と不安に思っている人には、役に立つ記事だと思います。ぜひ最後まで読んでいってください。
パートナーになれるのは10人中たった1人
監査法人でパートナーに昇進できるのは、およそ10人に1人です。
試験に合格して監査法人に入所した同期が200人いたとすると、そのうちパートナーになれるのは20人前後です。
この20名前後という数字を聞いて、「もう少し多いのでは?」と思う人もいるかもしれません。
実際、社員総会後に内部向けに公表されるパートナー昇格者リストには毎年4~50名程度がリストアップされていると思います。
でもこのリストをよく見てください。その中にプロパーは何人いますか?
監査法人では、稀有なスキルを持った人がパートナー待遇で途中入所することも珍しくありません。
また公認会計士の資格を持たないコンサルタント等がアソシエイトパートナーやディレクターに昇進している場合もこのリストに含まれています。
これらを考慮すると、プロパーの公認会計士がパートナーに昇進できるのは、およそ一割にすぎないということがわかると思います。
この数字は私の周りで実際にパートナーに昇進している人の状況とも符合します。
あなたは、この一割に入れそうですか?
パートナーに求められる能力
パートナーに求められる能力は、大きく分けると以下の3つだと思います。
- 新規業務を獲得する能力
- マネジメント能力
- 質の高い監査を遂行する能力
新規業務を獲得する能力
新規業務を獲得する能力については、単に営業能力が高いということだけではなく、常に社会の変化に対応して新しいビジネスを創造していく能力が求められています。
新規の監査業務やコンサル業務を受注することが評価されないわけではありませんが、十分ではありません。
制度改正など社会が変化するところには、ビジネスシーズがあるものです。
これらを目ざとく見つけて、新しいビジネスへと成長させる能力がある者がパートナーへ昇進できています。
マネジメント能力
労働集約型産業を生業とする監査法人では、人材がすべてといっても過言ではありません。
パートナーはこれら人材をうまくマネジメントして、より多くの成果を生み出すことが期待されています。
従ってパートナーには高いマネジメント能力が求められています。
質の高い監査を遂行する能力
パートナーは監査業務においては最終責任者になるため、質の高い監査を遂行する能力が必要とされるには、当たり前のことです。
またエンゲージメントごとの監査品質を維持するための相互チェックとして審査体制が構築されています。このような審査体制の下では、多くのパートナーはエンゲージメントにおける監査の最終責任者を担うと同時に、他のエンゲージメントの審査担当を担っています。
従って一部の例外を除いて、質の高い監査を遂行する能力が求められることは当然のことです。
これらの能力のうち、一つでも欠けている人は、パートナーになることは難しいでしょう。
あなたには、これらの能力が備わっていますか?
- 新規業務を獲得する能力
- マネジメント能力
- 質の高い監査を遂行する能力
これらのうち一つでも欠けていればパートナーになるのは難しい
良好な人間関係も重要
パートナーになるためには、良好な人間関係を築いておくことも重要です。
パートナーへの推挙は上司であるパートナーが行うため、上司であるパートナーに好かれていなければなりません。
パートナーに嫌われているシニアマネージャは、パートナー昇進のための土俵にも上げてもらえないことでしょう。
また上司だけではなく部下からの評価も高くなければ、パートナーにはなれません。
パートナーになれば、今まで以上に部下をうまく使って大きな成果を出すことが求められます。
従って部下に嫌われているようでは、パートナーになるのは難しいでしょう。
あなたは上司に好かれているだけではなく、部下にも慕われていますか?
昇進できない者に居場所は残されていない
私は公認会計士になった以上、いつかはパートナーになって監査報告書にサインをしてみたいと思っていました。
そのために、それなりの努力をしてきたつもりです。
でも一方で努力してパートナーになれないなら、それを受け入れようとも思っていました。
シニアマネージャでも年収1200万円程度は稼げます。定年までシニアマネージャとして働けるなら、それはそれでいいと思っていました。
でも現実は大変厳しいです。
監査法人では昇進の階段を上がれなかった者に居場所は残されていないのです。
監査をさせてもらえなくなる
担当する監査クライアントですが、最大5社ありました。
ところがシニアマネージャになって5年目あたりから、新しい担当が増えることはなくなり、担当するクライアントの数が年々減っていきました。
監査クライアントの数には限りがあるため、人材育成のことを考えれば、昇進がなくなった者にいつまでも主査を担当させるわけにはいきません。
担当していた年数が長いクライアントから順に担当を外されていき、最後にはすべての担当が外されてしまい、監査をさせてもらえなくなってしまいました。
これまで監査業務に主軸をおいてきたので、監査をさせてもらえなくなるとは思いもいませんでした。
空いた時間を埋めるための営業活動
監査クライアントの担当は外されていくのですが、新しい業務を割り当ててもらえることはありません。
その結果、執務報告書の時間を埋めるために新規業務を自分で獲得しなければならない状況に追い込まれていきました。
元来、営業を不得意にしていたのですが、ある分野で制度改正に関わる特需があり、それなりの新規業務を獲得することができたのはラッキーでした。
しかしながらそのような特需は、いつまでも続きません。またそう都合よく制度改正が行われるわけもありませんので、先のことを考えると胃がキューっと締め付けられる思いがします。
気が付けば異質な存在に
監査の仕事が減っていく中で、それまで従順だったスタッフや若手のマネージャたちの態度が変わってきます。
従順だった後輩たちが、だんだん言うことを聞いてくれなくなるのです。
若手のスタッフやマネージャたちは、事務所のパワーバランスをよく見ています。
これは私にも身に覚えのあることなのですが、スタッフや若手のマネージャたちも忙しいので、昇進の芽がなくなった者のいうことなど聞いている余裕はありません。
これはある意味仕方ないことなのかもしれません。
監査から外れていくことも相まって、部門の中でだんだん自分が異質な存在になっていくことを感じます。
私はここで初めて、普通の公認会計士がパートナーを目指すのは無理ゲーだと気付きました。
あなたの周りでも同じことが起きてるよね
正確にいうと無理ゲーだとうすうす気付いていたけど認めてこなかったものが、ここにきて認めざるを得なくなったということだと思います。
部門の中の職員で、私よりも長く務めている職員はほとんどいません。
これは先輩たちが同じような境遇に置かれ、監査法人を去っていったからに他なりません。
そのような先輩たちを見て
- 「努力が足りなったのだ」とか
- 「能力が足りなかったのだ」とか
- 「運が悪かったのだ」と
思うようにしてきました。
「監査法人で定年まで働き続けることはできない」という現実を直視するのが怖かったので、自分の中で都合の良いように合理化していたのだと思います。
これは大きな誤りでした。
認めるのは怖いものですが、パートナーになれない者に、残された居場所はないという事実から目を背けてはいけません。
公認会計士のキャリアは監査法人での昇進だけに限られるものではないのに、目を背けていると取り返しがつかないことになってしまいます。
あなたの周りでも同じことが起きてますよね?
あなたは定年まで職員として働き続けた公認会計士を知っていますか?
周りで当たり前のように起こっている事実から目を背けていてはいけません。
今のうちから外にしっかり目を向けよう
もしあなたが監査法人でパートナーになりたいと考えていて、同じ部門の同期の中で一番あるいは二番目に優秀だと思えるなら、パートナーを目指すのが良いと思います。
でも自分のことを「優秀でもないが仕事ができないわけでもない普通の会計士」だと思うなら、あなたは監査法人でパートナーにはなれないと思います。
でも落ち込む必要なんて全くありません。
監査法人では昇進できないかもしれませんが、外に出れば大成する可能性は無限大にあるはずです。
それなのに多くのチャンスを逃してまで、監査法人でギリギリまで我慢する必要は全くありません。
公認会計士のキャリアプランは、監査法人での昇進だけではありません。
公認会計士には多彩なキャリアプランが用意されています。
「パートナーになれなくても定年まで働けるはず」という幻想は早く捨てて、監査法人で得るものを得たら、次のキャリアを考えるべきだと思います。
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