こんにちは。
「書いている人」@CPABlogです(プロフィールはこちら)。
先日、同業者の友人と飲みに行ったのですが、その友人が「東京で働くことに疲れたので、地方事務所でのんびりスローライフを楽しみたい」と言っていました。
この友人がどこまで本気かは分からなかったのですが、同じように地方事務所で働くことを考えている方もそれなりにいらっしゃるのではないでしょうか。
私は地方事務所で3年ほど働きましたので、地方事務所の実情はよく分かっているつもりです。
今日は地方事務所で働くことの是非について掘り下げてみたいと思います。
地方事務所で働くメリット
地方事務所で働くことには以下のようなメリットがあります。
お金がたまる
私の場合は事務所都合の転勤だったため、毎月上限10万円の家賃補助がありました。
それまでは駐車場代込みで毎月15万円ほど支払っていたのですが、地方では同じような間取りの部屋を自己負担なしで借りることができました。
また東京に比べると地方の物価は、格段に安いため、同じような暮らしぶりでも自然と生活費を抑えることができます。
東京で支給されていた大都市手当はなくなりましたが、それ以上に生活費が掛からなくなったことから、3年間で貯蓄は一気に増えました。
生活の質が格段に向上
東京での通勤時間は1時間15分くらいでした。
ところが地方事務所に転勤してからは事務所の近くに部屋を借りることができたので、通勤時間は10分と激減しました。
平日はほぼ仕事だけの毎日でしたが、転勤してからは家族との時間を作ったり、趣味に時間を使ったりすることができるようになり、生活の質が大きく向上したように思います。
また東京では休日に自然と触れ合おうと思っても大変ですが、地方では豊かな自然がすぐ身近にあります。
地方事務所にいた頃は、休日によく出掛けていたように思います。
マネジメント経験を積むことができる
私が3年間働いていた地方事務所は職員が60名程度の事務所でした。
このくらいの規模だと、職員でも事務所運営に深く参画することが求められます。
東京では飲み会の幹事くらいしかやったことはありませんでした。
地方事務所では外部研修会の企画運営、定期採用活動、所内研修の実施、各監査チームへのアサイン、営業会議への参加など、事務所運営に関わる機会が一気に増えました。
それまでは、せいぜいメインの監査チームのことくらいしか考えることができませんでしたが、事務所の視点に立って物事を考える経験を積めたのは、良かったように思います。
仕事が楽
誤解があっては困るのですが、地方事務所でも毎日忙しくしていましたので、決して暇というわけではありません。
ただ求められるレベルは地方事務所の方が、間違いなく低いのは事実です。
東京で仕事をしていると、びっくりするくらい優秀な人と一緒に仕事をすることがあります。
このような人と一緒に仕事をすると要求水準も高いことがほとんどなので、こちらも緊張しながら仕事をすることになります。
でも地方では、このような人とはまず出会いません。
経営者の皆さんも「田舎のおっちゃん」という感じの人が多く、オーラのようなものを感じることは、ほとんどありませんでした。
地方事務所での3年間は忙しくしてはいましたが、仕事は楽でした。
地方事務所で働くことのデメリット
一方で地方事務所で働くことには、以下のようなデメリットがあります。
クライアントが少ない
東京以外でも大阪や名古屋、福岡などに本社を置く上場企業はそれなりにあります。
でもその他の地方に本社を置く上場企業はほとんどありません。
監査法人のクライアントは上場企業だけではありません。
でもそもそもの企業数自体が東京とは比べ物にならないくらい少ないのが地方です。
若い人だと、さまざまな業種の監査を経験したいと考えていると思います。
でも企業数が少ない地方では、クライアントのバリエーションは乏しくなってしまいます。
さまざまな業種の監査を経験したいと考えるなら、地方勤務は避けるべきです。
なんでもやらないといけない
地方事務所では限られた人材で、さまざまなことに対応していく必要があります。
監査以外のマネジメント業務などにも関わりたいと思っている人にとっては、チャンスなのですが、監査を中心に経験を積みたいと思っている人にとっては、地方事務所は不向きです。
一流がいない
地方で最先端なことをやっている企業はほとんどありません。
東京でやっていることを2年遅れでやっている企業が多い印象です。
メリットで「仕事が楽」と書きましたが、裏返せば刺激が少ないということになります。
私は地方事務所で勤務した3年間で、刺激を受けるような経営者やクライアントの従業員に出会うことはありませんでした。
また地方事務所に勤務している同僚たちにも同じことが言えると思います。
一流の人たちから刺激を受けながら自らも成長していきたいと考えるなら、地方事務所で勤務してはいけません。
地方勤務はキャリアにはマイナス
私は周りの同僚とは違うことをやりたくて、地方事務所への転勤に手を挙げました。
確かに地方事務所で働いた経験のある会計士の数は、それほど多くはありません。
でも大した経験も積めないのに、あえて地方事務所へ転勤する理由などありません。
地方事務所を選択するということは、「キャリアを中断して楽をしに行く」ようなものです。
東京に戻って強く思うのですが、心がけ一つで、東京でもさまざまな経験を積むことができるのです。
マネジメント経験を積みたければ、仲のいいパートナーに相談してみてください。
喜んでマネジメント業務に関与させてくれます。
地方事務所ではパートナーになれない
この記事を読んでいる人の中には、東京でパートナーになれず、都落ちして地方に活路を求めているひともいるかもしれません。
でもパートナーになりたい人ほど、地方事務所を選んではいけないと思います。
上述したとおり、地方にはクライアントになるような企業がほとんどありません。
そのようなやせこけた土地で大きな成果を出すことが難しいことは、誰が考えても分かると思います。
大きな成果を上げたいなら、肥沃な土地で成果を上げることを考えるべきで、東京を離れるべきではありません。
地方事務所では東京以上にチャンスは少ないです。
地方事務所は東京のいずれかの事業部に属しています。
このような法人の場合、地方事務所のパートナーは東京から派遣されてくることが多く、地方事務所プロパーのパートナーは驚くほど少ないものです。
監査法人でパートナーを目指すなら、地方事務所で時間を無駄にしてはいけません。
地方事務所ほど居場所がなくなる
私はパートナーに登用されるほど評価を得ることができず、今になって居場所がなくなり困った立場に追い込まれています。
でも東京にいたからこそ、ここまでは何とか来れたのだと思います。
地方に本社を置く上場会社の数は圧倒的に少ないです。
これは地方事務所でのポストが極めて少ないことを意味します。
東京でさえ後輩たちに経験の場を明け渡すことを求められているのに、地方事務所での事態はもっと深刻です。
地方事務所に残っていたら、もっと早くに居場所を失っていたでしょう。
まとめ
東京の第一線で仕事をしていれば、地方事務所での勤務なんて楽勝でこなせます。
でも先々のことを考えれば、地方事務所で無駄に時間を浪費していてはいけません。
パートナーを目指すなら、肥沃な東京で成果を出せるように頑張るべきです。
またいずれは監査法人を卒業するつもりなら、次のキャリアに必要となるスキルを早く身に付けることに全力を尽くすべきです。
独立開業したいなら、一刻も早く税務実務を経験すべきで、地方事務所で時間を浪費している暇はありません。
また一般事業会社に転職するつもりなら、地方勤務はマイナスに評価されることはあってもプラスに評価されることはありません。
焦る気持ちは分かりますが、地方事務所に出口はありません。
私のように40代になってから居場所を失ってしまうと、悲劇以外の何ものでもありません。
自分の身は自分で守るようにしてください。
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